続き。 停戦を求めゼウスのもとへ直接むかうアイオロス側と、アイオロス達を討つ為に追うサガ側。




きっと、彼は俺を追ってくるだろうと、そう、判っていた。



「…っ!アイオロス様!!!双子座です!!!!」

目の前で、俺を守ろうとした雑兵の首が赤い軌跡を描きながらぱぁんと消えた。頭一つ分、目の前の視界がひろがる。赤い世界の先に、仲間の首がぽっかりと消えた目の前の世界の、その先に、──彼が、いた。ずっと、ずっと、求め続けていた人の姿。

「…サガ、」

禁忌の名前は、しかし、呟いてしまえば甘美に響いた、気がした。
あの空よりも複雑な色を秘めた蒼の双眸が、真っ直ぐと感情のかけら一つみせず、其処にあった。深い、色。

「……やっと、逢えた」
「逃げていたのは、貴様のほうだ」

青い瞳の色がゆらりと変化する。その場の空気が、アイオロスにとって異質なものに変化していこうとする。じわりじわりと浸食されるのを感じていたが、どうでも良いことだった。

「貴様が、死ねば、良かったのに」





「…双翼の英雄とはぐれたか、牡羊座」
「………山羊座」

見知ったその顔に懐かしさと同時、深い絶望を、その時ムウは感じていた。そうして、その後ろにたたずむ男をみて、思わず目をそむけた。

「当然だ」
「…………そうですね」
「俺はこの方の盾となり死ぬ宿命。俺が動くのではない。彼の傍に、常に俺がいるという、ただそれだけのこと」





空間にからめとられた。躊躇いもなく青い瞳の支配した全てが、アイオロスの体を捕らえ、縛り付けた。抵抗ひとつせず(全てを知っていたにもかかわらず)、アイオロスはただ真っ直ぐと青い瞳を見つめ返しただけだった。

「死ねば、良かったんだ」

空間を支配したくせに、それなのに、何故だか苦しそうに顔をゆがめた青年がゆっくりとアイオロスに近づいた。

「─────俺を、殺すか?」
「貴様のその魂がこの世界から消えない限り、私たちのこころは晴れない」

一層アイオロスを縛る力が強まる。ぎしりと、きしんだ音がきこえたきがした。このまま支配され続ければ、どうなるかなど判りきっていたくせに、それでもアイオロスのその禁忌の瞳が輝く事はない。青い瞳が揺らいだ、憎々しげに。

「相変わらずくだらない男だ。貴様の何がそうさせる。矜持か?理想か?それとも、夢幻に消え去った過去か? もう何も取り戻せないくせに。 貴様如きに何が出来る…!」

激情に感化された空間がびしりと射手座の頬に赤い線を走らせた。散る、鮮血。

「争う理由が判らないか?教皇の座に興味はないだろう、どこにも属せぬ風の名を魂に刻まれたからな」
「…共に、聖域を守る事も出来た」
「無理だと、判ってるくせに」

その結果が、これだとわかってるくせに。
甘く笑った口元がそのままアイオロスに近づく。弓なりに笑みを刻んだ唇が、ゆっくりと音を紡ぐ。アイオロスにも判るように、ゆっくりと。

「何もせず、何にも囚われず、そうやって、この問題から目をそらしたのは貴様だろう、風」
「…………」
「貴様は私との事から、聖域から目を背け続け、そうして完璧に断絶されるまで何もしなかった」
「…だから、殺すか」
「相変わらず、勝手な奴だ」

頬に伝う血をゆっくりと撫でながら、近づいた唇が引き合うように重なった。

「………ごめん、」
「……………」
「君だったのか」
「……………」
「ごめん」

────カノン、

全てを偽っていた青年が笑った。困ったように笑った。それでいて、目だけが相変わらず狂気の色を秘めていた。ささやきは、甘かった。かつて過ごした日々のような。

「気付く必要はなかったのにな。…何から何まで貴様は誤った。貴様は取り返しのつかない選択をした。…神は、聖域の崩壊を望んでいる。この余興は、全てを終わらす口実。神は、聖闘士の血がたえる事をお望みだ。俺は、瞳の継承者の貴様を殺せない。そして、唯一貴様を殺せるサガは、でも貴様を殺せない。神の望みは、相討ち共倒れ。だけれど、そんなこと…俺は許せない」

アイオロスの瞳がはっと色を変える。変わりきる前に、カノンの支配した空間がはじけた。その寸前、はっきりとアイオロスの耳に届いた、言葉。遺書。

『サガを、貴様如きに殺させてたまるか』

血が、はじけた。




血しぶきの中で、鮮やかな赤い世界で、翡翠の瞳はようやく本来求めるべき色と出逢う。かけがえのない、色。かつての世界の優しい色。はじまりと、終わりの色。カノンの砕け散った、いなくなった世界で、真っ赤に染まった衣に身を包んだアイオロスが、その血のむこうに立ち尽くす双子座をみつけた。彼は今度こそ、この何年つぶやき続けたその名を、紡いだ。



見開いた青い目が、禁忌の力を解放しようとしていたのを知った。



 (070313)
山羊座と牡羊座は相討ち。一種のバトロワ的内容なので凄く書くの嫌でした。サガが死なないように、自分が彼の目の前で死ぬ事によって憎しみでサガが生き残ればいいと思ってるカノン。カノンはでも憎しみと同時に、ロスにどうしようもなく惹かれていればいいと…また話とは関係ない事んですが…。どうでもいいけど、何かもの凄く変な話を書いててごめんなさい。もうちょっと続くけど、もういいよ…。この後、不死身の乙女座が射手座をさらいます。その間に大神は聖域を破壊。瞳の力を解放したサガは乙女座の不死身とされた命すら容赦なく奪い、そうしてもう後にもひけず、ロスと相対する…んです………多くの奪われた命、この闘争とは関係なかったはずのカノンすら死んでしまった負い目、責任だとか、今まで殺せるはずの男をそれでもうだうだと殺せなかった自分の甘さを恥じ、アイオロスを殺そうと悲壮の決意をするサガ。ロスとサガ以外すべてを神の手の上で殺されたと知ったアイオロスは、誰が一番悪いかといったら自分が悪いのだと…。お互い精神が崖っぷちの中、頼りにするものもないまま相対し、瞳の力を解放しようとします(ロスサガの瞳の能力も設定あるけど…もういいよ…)。でもサガは、翡翠の瞳をみて、無理だと思うのです。見てしまえば、愛おしさがあふれてどうしようもないんです。かつてのサガを救ったのは、紛れもない彼で、サガの幸せはかつての彼が全部くれたものだったんです。殺せない、でも殺さなければカノンやデス達は……だから、サガは目を瞑りました。瞳なしでロスには勝てません。判っていて、サガは短剣だけでアイオロスにむかいました。そして。

呆気なく、それは届いた。
「………サガ、」
いつのまにかアイオロスの腕に抱きしめられていた。力強く抱きしめられていた。かつて、あの日、サガが愛した陽の匂いがした。そうして、サガの手には血がつたう。
「あいしていたよ」
ささやいた男は、かつてのように笑った。

っていうのを上手く文にしてみたい。映画はほんと何かあっさり刺されちゃって、私もびっくりでした。サガは選択をした、瞳の力は使えなかったけど殺そうと刃物は握った、なのに、アイオロスは選択をしたわけじゃない。委ねたんですよ、サガに!自分の命を!愛してるから、生かす。どうなっても殺せない。そうして理不尽なロスは死に、サガは血まみれのまま一人で天界の門に辿り着きます。。……とゆう感じでした……もう駄目…なにこのあとがき…。