どちらが黒で、白か。
選べてしまえば、もっと違う未来を辿ったのだろうか。


***


世界が激しく境界線をなくしてゆく。
何処が天で、何処が地か。
ぐらぐらする視界の中では、色彩をなくしただ黒と白のそれが延々と広がっていた。いっそ、世界の仕組み自体も判りやすく白黒で区別できてしまえばいいのに。
何が正しくて、何が間違っているのか。
白と黒で容易に判別できない世界が苦しいと時折思う。
ああ、でも、そんな世界さえ愛している。

選べと云われた。
夢告の中の女神も、今はいない教皇も、彼の双子の弟でさえ…。
どちらかを選べと、告げてきた。

白か、黒か。どちらかだけの未来を。

───そして、どちらも選びきれなかったアイオロスは今こうして赤子である女神を抱えて、走っている。

何処へ。何処へ?…何処かへ。

何が正しくて、何が間違っていたとしても。もうアイオロスには判らない。懸命に走るしかない。止まる事など許されない。白も黒も、アイオロスには判らない。
選べなかった代償かのように、色が剥ぎ取られていく視界に、それでも笑ってやった。

世界の色が消えようとも、瞼裏のあの鮮やかな色だけは未だ此処に残されている。
白でも、黒でもなかった。

此処には白と黒よりも鮮やかな蒼い瞳の色だけが存在している。

それが答えであり、彼の全てだった。



092. 無彩色 (050323修正)