─────ドクン…


「いい加減、気付よ。アイツ、絶対おかしいって!」
「……誰が?…」
「判ってるだろ?!あの双子座の候補生の───サガだよ!」


─────ドクン…ド…


「お前さぁ、もうアイツに関わるのやめろよな」
「そうだよ!だって…あいつ……関わらない方が身の為だって!」
「何で、そういう事いうんだよ」
「…………時々、サガって…変な小宇宙だすじゃん…」


─────ド…クン……ド、ドクン


柱の影に身を隠していたサガは、胸をきつくおさえた。
自分でも判る程、心臓の鼓動がおかしい。

心音が二つ、聞こえる…二つの心音が重なって一つになるかの様な…

此処にこれ以上、いてはいけないんだと、サガの内で警鐘が響く。
だけれども、足は石になったかの様に微動たりとも動かなかった。
会話の続きが気になって、でも聞きたくはなくて…二つの感情がサガの中を揺れ動く。

仲間達の話をつい聞いてしまう形になってしまったのは偶然だった。
図書館に行こうと神殿を横切った時、つい話し声が聞こえてきたのだ。
自分の、陰口を。
同期の訓練生たちの声の中に、とてもよく知る声の者もいたからこそ、足は止まった。
一人は───アイオロスだった。



「…お前だってオカシイと思ってるんだろ?」
「あんな異質な小宇宙…ヒトがもつモンじゃねぇよ!アイツはヒトじゃない…」
「……アレは…きっと────」
「────何云ってんだ」


─────ド…ックン……



「サガは、オレの親友だよ」








久しぶりに家に帰ってきたサガは、「おかえり」というカノンを無視して、そのまま自分の部屋に入っていった。普段になく足音は荒く、大きな音をたてて戸は閉められるのを見て、カノンは首を傾げた。


私室にこもったサガはそのままベットの上で、柔らかな枕の中に顔をうずめていた。
鼓動は、まだ止まない。

───驚いたのだ。
心底、驚いた。
そう云われるとは全く…思ってもみなかったのだ。
鼓動は、まだ止まない。
……いくら、考えても信じられなかったのだ。
そして、同時に哀しくなった。

「………アイオロス………私は……」



(いつか、私から同じ言葉を君に言える日が来るのだろうか)




054. 鼓動
親友とは、何の隠し事もなく話し合える仲の事だそうです。
この後、ラストソングの最後の方…そして、お題の「ふたり」に話は繋がっていきます。