光が怖いと、云った君へ。


だから、俺を殺してしまった君へ。





光から逃げ、影の國に行った君へ。


でもやはり、赤の闇をも恐れた君へ。








何処に行けば良いのか判らなくて、
世界の何処にも自分の場所なんかないんだと、叫んで。

帰る道も判らなく、途方に暮れた君へ。





未だに光と影の世界の狭間を彷徨う君へ。





女神の導きの光さえ拒み、一人うずくまり、
何を待っているのかでさえ、自身で判っていない君へ。







もう一度、君を見つけられたら、云おうとおもった言葉があるんだ。







復活の光を拒み、でも闇に紛れる事も出来ずに、うずくまる君へ。

ようやくと見つけられたら、笑って云おうと思うんだ。
君は、ひどく怯えてしまうと思うけれど。








見つけた君へ、笑いかける。
目線をあわせる為に、しゃがんで、少し近寄れば、彼も少し離れる。
ああ、あの頃と何も変わってないな、と笑って。
だから、対処法も心得ている俺は、手をのばす。
触れて、掴んで、引きよせる。



笑う。



「帰ろう。」

「………。」

「帰ろうよ、サガ。皆、待ってるよ。」

「………。」

「あそこは、違うよ。」

「………?」

「あそこは違う。光の在る場所じゃない。影のこごった世界でもない。
君はたくさんの事を誤解しているんだ。いや、誤解じゃない、曲解してるんだ。」

「………、」

「光だけの世界もないし、影だけの世界もない。」

「………、」

「それに、サガはこだわりすぎているんだ。光だとか、影だとかに。」



サガは、頭良いのに、変な処で莫迦だね。

不安気な蒼の瞳が揺らぐ。震えた唇が何事かを紡ごうとしてやめる。
いつも。そう、いつも。
知っていたんだよ。



「あそこは、光の在る場所でも影の國でもない。あそこは違う。」



どうすれば、言葉が通じるかなんて、知らない。
一度は届かなかった言葉たち。それが今更どう届くかなんて、本当に判らない。
────でも。
あふれる言葉を、想いを精一杯伝えよう。


こつん、と彼の額に自分のそれをあてる。
つかんだ腕が微かに震えるのが判った。
でも、離してあげない。
額をあわせて、眼を閉じる。

伝えきれなかった言葉を今度こそ伝える。





「あそこは、サガの居場所なんだよ。」





今度こそ、せめて届けば良い。



祈る様に、その瞬間を、待つ。

そして、────…







「……アイオロス…」





あの日、小さすぎて届かなかった言葉を、
アイオロスは今度こそしっかりと聞き止めた。



ようやく返った返事に、アイオロスはただ微笑んだ。






037. 光と影