さしだされた手を、サガはきょとんとして見つめ返した。
そんな様子をみて、少年が苦笑する。


「君と握手がしたいんだ」
「……何故?」


今まで誰一人としてそんな人間いなかった。
ここ数十年生まれる事のなかった黄金の光をもつ子供であるサガは、周りから腫れ物のように扱われたからだ。他の候補生とも違う。未だ洗練されていなかったがそれでも強大な小宇宙宿し、大人の聖闘士さえ圧倒した。何よりも人間離れしたその見目の美しさに誰もが触れる事近寄る事をおそれていた。組み手だけならまだしも、休憩時間に急用でもなければ皆彼を見て見ぬふりをして。サガ自身は別にそれをどうとも思っていなかった。双子の弟との世界があればそれで良かったのだ。それだけが全てだった。なのに、───。
恐れる事なく笑顔で近寄ってきた人物を、サガはまじまじと見つめた。


「何でって云われてもなぁ」
「握力勝負でもしたいのか?」
「まさか!違うよ、全然違う。俺は君と友達になりたいから、握手をしようって云ってるんだ」


サガは驚いてもう一度その掌を見つめてから、ふたたび少年の顔を見た。自分の世界に入ってこようとする少年の顔を。そしてしばらく躊躇った後、おそるおそると自分も手をさしだす。

握手なんて、初めてだと思った。



035. ともだち (050323修正)
拍手のオマケSSでした。