「聖闘士の魂は巡り巡って、また来世で聖域に戻ってくるって本当なのか?」

こたつから出した顔を、テーブルの上におきながらそう聞いてくる丸い目に、ようやく書類から顔をあげたセージが「そういう可能性が高い、という話だ」と素っ気なく答えた。
そうしてまた書類を読み始めてしまった師に不満を感じたマニゴルドは、えいっと同じこたつの中にある足を思いっきり蹴ってやった。が、敵はあの前聖戦を生き抜いた教皇さまである。
素直に蹴られてくれたと思ったが、逆に蹴った子供の足がずんずんと痛む事となった。

「もし、それが真実だというのなら、…お前はまた此処に戻ってきたいか?」

痛む足をさすっていた子供がぱっと顔をあげる。
なにげなく紡がれた問いと、書類から眼を離さない師。

あの日、塵芥のように死ぬはずだった小さな死神に、命は宇宙だと何とも壮大な事をいってみせた人間。宇宙なんてあの頃は想像もできなかった。
(それが、今は胸の奥で確かに息づいている)
(あの日、子供は命の名を教えられたわけではなかった。「命」をもらったのだ)

「俺は別に、」

もし、来世があるのなら、来世ではあんたと親子になってみたいと、そう思っただけだ。

声にはださなかったが、しかし読心術を得ている教皇さまである。あっさり見抜かれ、おまけに腹を抱えて笑われた。

「あっはっは!あの糞ガキが、可愛い事を云うようになったじゃないか」
「なっ!!!笑うな!!糞ジジィ!!」

こたつの上にある蜜柑を投げつけてやろうかと思ったが、それより先に、師の大きな大きな掌がマニゴルドの頭を優しく撫でた。その重みが、マニゴルドは好きだった。

「だが、しかし私はごめんだ」

それはそれは慈愛に満ちた笑みで。

「だって、私は今の糞生意気なお前が好きなのであって、生まれ変わったお前はお前ではないのだから」


だから、どうぞ、「今」を精一杯生きて。

(親以上の愛をそそぐから)



奇跡みたいに、愛してる (080110)

蟹座マニゴルドと教皇の過去話。
聖域に、こたつがないけど、こたつイメージが強い…