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夫婦といっても、部屋は別々である為に、いまいちサガには新婚だという実感がもてない(持ちたくもないが)。 国民から祝福された政略結婚。シンデレラストーリーといえば綺麗かもしれないが、たった一人の肉親カノンを取引材料にされてでの婚約であるのだから、何ら楽しくも嬉しくもない生活であった。おまけに相手はあれである。宮廷生活は窮屈で退屈すぎた。 唯一の良い点といえば貴重な書物がたくさん書庫にしまってある事である。今日もそこからぶあつい本を一冊手にとって読んでいた最中であった、───国中から愛された王子であり、学校の英雄であり、そして夫であるアイオロスがサガの部屋を訪ねてきたのは。 ソファに寝そべるサガの目の前で立ち止まり、じっと無言で見下ろしてくるのだから、さすがのサガも嫌々口をひらいた。 「……何かご用でも? 王子」 「床入りだそうだ」 「は?」 「先君直々のお達しだ。俺と、お前は今夜強制的に床入りの儀式を受ける事になる」 「は???」 * 教育係のアフロディーテが神妙な顔をして戸の前にひかえている。アフロディーテだけじゃない。その部屋の周囲にはずらりと女官が座している。サガとアイオロスの寝室のまわりで、だ。 「王宮には、プライベートがないのか?」 「俺は生まれた時から世界の中心にいたよ」 「それは、随分と狭い世界だな」 「何が?」 「何でもない」 随分とくつろいだ姿でアイオロスは、近くの灯を消した。部屋はいっきに暗くなる。外には確かに大勢の人間の気配がするというのに。 月明かりだけが今のサガには妙に心地よかった。 「さて」 不意をつかれたサガは簡単に寝床に押しやられた。顔はよくみえないが、肩にかかる指のちからと、のしかかってくる気配に背筋がぞくりと震える。 「私はまだ認めてないからな!」 「…この後に及んで。全国民の前で愛を誓ったくせに」 「他に好きな人がいるのはお前だろ」 「それでも仕方がない。…俺は、この国の次期国王だから。そして、国王の横には伴侶がいなければならない」 あまりの理不尽な展開に、サガはもう何もいえなくなった。 宮(続きます) (080225) |