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その美しい少年がゆっくりと深く頭をたれれば、金の髪の一房がはらりと流れて、その先を床におとした。綺麗に磨かれた床に自分の顔がみえそうな程近く、彼はまるで服従するかのように膝をついて。 少年の前には、うり二つの顔をした神ふたり。 「射手座の星が沈まねば、お前はそうも従順な態度をとらないな。いつもいつも」 不愉快そうな顔で告げながら、その実、眼は愉快気な色を神の片割れはみせていた。もう一方は、感情などないような涼しい顔で眼をふせる。言葉だけが、少年に届いた。 「そして、おまえは双子でありながら、いつだって最後ははんぶんのまま私たち双子の神の前に現れる」 「兄上、前回は何故かたわれだけだったのだっけ?」 「さあ、もう忘れてしまったよ。所詮はとるに足らぬ事。繰り返しこうして干渉してくる私たちを暴こうとした先代の射手座のあの憎き顔なら今でも思い出せるがな」 「まあ、ハーデス様が罰をお与えになさったからな」 「判るか、双子座。これが前世の罪をくいるための業だ」 「繰り返し繰り返し与えてやっているのに、未だ判らぬらしいがな。お前達がこうなったのは、何度目だと思っている?」 「前回だって、その前の前でだって、ずっとずっと業は繰り返されているというのに、」 「しかし、今回は殊に面白い。お前はひとり生き残って、射手座が得るはずだった栄誉をてにするのだから」 「罪は、幾度もお前達がハーデス様に弓引くこと。業は、お前達の魂が永遠に交わらぬこと。それだけだ」 「だから、この度のこれは、業の引き金はしかしお前の魂の意志だ。我々の存ぜぬところ。お前の魂が引き寄せ、そして業を業と楔つけた」 「ああ、とうとう魂が狂ってしまったんだな可哀想に」 神の手が、少年の髪の一房をもちあげ、その滑らかさを確かめる。そこにたとえ誰かの血がこびりついていようとも、神は些細な事など眼にとめやしないのだ。 少年はただひたすら、床にうつる自分の顔をみつめていた。何をいわれても何も感じる事ができなかった。自分の知らない昔など、興味がなかった。彼は、今ここで、ただ必死に生きていただけだった。 ただ、 「双子座、おまえの髪はいつだって美しいな。青空の下においておきたい」 ただ。 昔、似た言葉をもらしていた人間の事がその瞬間だけふっと頭をよぎり、その時だけは床にうつる自分の顔が少しだけゆがんだ。 どうせなら、彼にそう云ってもらうほうが良かった。 (ああ、私は彼の事が存外好きだったのかもしれない) ふたごたち (071022) |